FutureVulsの自動トリアージ機能は、脆弱性管理を効率化するための3つのサブ機能で構成されています。それぞれの機能を組み合わせて利用することで、運用をさらに自動化できます。
特に「SSVC決定木による自動トリアージ機能」は、脆弱性管理の効率化に大きく寄与します。この機能を使うことで、リスクを正確に判断し、運用者の作業を大幅に削減できます。
従来、脆弱性管理にはCVSS(共通脆弱性評価システム)が利用されてきましたが、以下の課題が指摘されています:
CVSSベースの課題について詳しく知りたい方は以下をご参照ください:
CVSSの課題を解決するために、カーネギーメロン大学が提案したフレームワーク「SSVC(Stakeholder-Specific Vulnerability Categorization)」が登場しました。SSVCは、脆弱性リスクを多面的に評価し、リスクに応じた対応優先度を自動的に判断します。FutureVulsは、「2022年9月リリースにて商用サービスとして世界ではじめてSSVCに対応」しました。
SSVCでは、以下の4つの情報を基にリスクを分析します。
これらの情報を基に決定木を辿ることで、以下の4段階の優先度が自動的に導き出されます。
SSVC優先度 | 内容 |
---|---|
Immediate | 最優先で対応。必要なら通常業務を停止して対処する。 |
Out-of-Cycle | 定期作業以外で迅速に対応。 |
Scheduled | 定期メンテナンス時に対応。 |
Defer | 現時点では対応せず、リスクを受容する。 |
FutureVulsではSSVCエンジンを実装し、脆弱性管理をより効果的に行えるようサポートしています。詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください:
FutureVulsでSSVCトリアージエンジンを利用するには、以下の情報をシステムごとに設定します。
これら2つの特徴を設定するだけで、SSVC機能が動作し、検知された脆弱性を4つの優先度に自動分類します。
初めて利用する場合の推奨設定
SSVCのデフォルト決定木をそのまま使用することをおすすめします。
トリアージ指針に合わせて調整が必要な場合でも、決定木のカスタマイズが可能です。
FutureVulsのSSVCのデフォルト決定木は「CERT/CCのDeployer Tree」と同じ構成です。サイト上で以下の手順で決定木の詳細を確認できます:
FutureVulsでは、SSVC決定木によって導出された優先度を視覚的に確認できます。特に「判断根拠が明確である」という点が大きなメリットです。
導出過程の表示
「タスクタブ > タスク詳細 > SSVC」で、下図のように決定木の導出過程を確認できます。
フィルタ機能
脆弱性タブやタスクタブでは、「SSVC 優先度」列を利用して、Immediate
のみを表示するなどのフィルタ操作が可能です。
重要な未対応条件の分類
「脆弱性タブ > 重要な未対応の条件」では、Immediate
や Out-of-Cycle
を「重要な未対応」に自動で振り分けられます。
FutureVulsでは、SSVCが出力した4種類の優先度を基に、タスクステータスを自動設定可能なトリガーアクションを設定できます。
Immediate
タスクの場合:
High
2週間後
Scheduled
タスクの場合:
defer
Low
SSVC機能を活用することで、開発者や運用者の日常業務はどのように変わるのでしょうか?
通知の受信
Immediateに分類された脆弱性が検知されると、運用者はメール、Slack、Teamsなどで通知を受け取ります。
画面での詳細確認
通知のリンクをクリックすると、FutureVulsの画面に以下の情報が集約表示されます:
判断理由の明示
ページ下部に Immediate
と判断された理由が表示され、判断根拠が明確にわかります。
従来のCVSSベースの運用では、「CVSSスコアが9だから緊急対応が必要」といった曖昧な指示が多く、「では8.9はどうなのか?」と混乱するケースもありました。
一方で、SSVCでは以下のような明確な判断が可能です:
脆弱性の詳細情報だけでなく、CERT系の注意喚起、Exploit情報、EPSSスコアも1画面で確認可能です。
通知以外でも、画面上で未対応の Immediate
タスクや重要な脆弱性を確認できます。
重要な未対応リスト
Immediate
や Out-of-Cycle
と評価されたタスクは、「脆弱性タブ > 重要な未対応」に分類されます。このリストを日々チェックすることで、高リスクの脆弱性に継続的に対応可能です。
EPSSを活用したリスク予測
Scheduledに分類されたタスクでも、EPSSスコアが高い脆弱性をソートやフィルタで抽出可能です。EPSS(Exploit Prediction Scoring System)は「今後30日以内に攻撃に利用される可能性」を示す指標で、これを活用することで、潜在的な脅威に先手を打つ対応が可能です。詳細は「EPSSとの組み合わせでSSVCを補完」をご参照ください。
次に、組織全体で脆弱性管理を行うCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の視点から、SSVC運用フローを見てみましょう。
全社的なリスク確認
CSIRT担当者は、全社横断で Immediate
や Out-of-Cycle
と判断された脆弱性を確認します。例えば、放置状態のタスクや対応期限切れのタスクをフィルタして、担当者に対応を促します。
タスクの分類と自動設定
FutureVulsでは、SSVCに基づき以下の項目を自動設定できます:
効率的なグループ管理
多数のシステムが存在する場合、FutureVulsのグループセット機能を利用し、すべてのシステムを「allグループセット」にまとめることで、全社の脆弱性を1画面で一括管理できます。
新規に検知された脆弱性の確認
「allグループセット > 脆弱性」の「初回検知日時列」を使用して、新規検知されたImmediate脆弱性を抽出できます。
状況が変化した脆弱性の確認
「SSVC最新更新日時列」を使用して、状況が変化してImmediateとなった脆弱性を確認可能です。
トピック機能の活用
トピック機能を使えば、脆弱性ごとにコメントを登録し、メール通知を送信可能です。これにより、CSIRTは注意喚起を簡単に行えます。
未対応タスクのフィルタリング
「未対応のまま期限が超過したタスク」や「対応予定日が未設定のタスク」をフィルタして抽出可能です。
一括通知
複数のタスクを選択し、一括で担当者に通知できます。
従来、CSIRTではリアルなリスクに基づいたトリアージが難しく、リソースやコストの面で課題がありました。
FutureVulsのSSVC機能を活用することで、こうした課題を解決し、脆弱性管理業務を大幅に効率化できます。
SSVCの詳細やFutureVulsの自動トリアージについて詳しく知りたい場合は、以下のリソースをご参照ください。
EPSS(Exploit Prediction Scoring System) は、「今後30日以内に脆弱性が悪用される可能性」を数値化する仕組みです。FutureVulsはEPSSデータを取り込み、SSVCと組み合わせることで以下のような活用が可能です:
Immediateのさらなる優先順位付け
Immediateに分類された脆弱性の中でも、EPSSスコアが高いものを優先的に対応します。
SSVCの判断を補完
FutureVulsのEPSS機能についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
FutureVulsでは、「トリアージ設定」を使用して、特定の条件に合致する脆弱性やタスクの優先度を自動的に変更できます。
たとえば、SSVCで Immediate
に分類されない脆弱性であっても、CVSSスコアが10のものについて注意喚起するなど、SSVCを補完する形で利用できます。
FutureVulsの「自動非表示機能」は、リスクが低いと判断されるタスクを自動的に非表示にする機能です。
この機能を活用することで、運用者が高リスクのタスクに集中できるようになります。